
今や生活に欠かすことのできない「化学物質」ですが、便利な反面、健康被害の報告も相次いでいます。
建築の分野でも見直しの傾向にあり、平成15年7月の改正建築基準法では、ホルムアルデヒドを発散区分に応じた使用制限が規定され、常時換気設備の設置が盛り込まれました。
しかし、全ての化学物質を規制するのは難しい状況が続いています。
化学物質からなる健康被害を防ぐために、建築業界ができることは何でしょうか?
「住まい」と「化学物質」に焦点を当てて、考えてみます。
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住まいでの化学物質の健康被害、増加の原因は?

「快適で健康的な住宅で 暮らすために 改正建築基準法に基づくシックハウス対策」 国土交通省住宅局 より抜粋
化学物質が影響する健康被害が、増えた原因は大きく分けて3つあるとされています。
- 住宅に使用されている建材、家具、日用品からさまざまな化学物質が発散している
- 住宅の気密性が高くなった
- ライフスタイルが変化し、換気が不足しがちになった
それぞれ細かく説明していきます。
1. 建材、家具、日用品から発散する化学物質

「快適で健康的な住宅で 暮らすために 改正建築基準法に基づくシックハウス対策」 国土交通省住宅局 より抜粋
現状、建材・接着剤、家具、日用品(家庭用洗剤や柔軟剤、芳香剤 他)など、さまざまなものに、化学物質が使用されています。
シックハウス症候群が広く一般に認知されるようになり、建材に使用されている「ホルムアルデヒド」が注目されるようになりました。
しかし、健康被害の報告が確認されている化学物質は「ホルムアルデヒド」だけでなく、建材に含まれる「トルエン」「アセトアルデヒド」「エチルベンゼン」などその他の化学物質も健康被害の原因となるものがあり、厚生労働省では13の化学物質について、室内濃度指針値を発表しています。
参考:室内空気中化学物質の室内濃度指針値について(厚生労働省)より引用
揮発性有機化合物(VOC) |
主な用途 |
毒性指標 |
室内濃度指針値 |
指針値の設定日及び改定日等 |
ホルムアルデヒド |
建材を加工するときに用いられる合成樹脂、接着剤、防腐剤等 |
ヒト吸入曝露における鼻咽頭粘膜への刺激 |
100μg/m3
(0.08ppm) |
設定日:
平成9年6月13日 |
アセトアルデヒド |
接着剤、防腐剤等 |
ラットの経気道曝露における鼻咽頭嗅覚上皮への影響 |
48μg/m3
(0.03ppm) |
設定日:
平成14年1月22日 |
トルエン |
内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
ヒト吸入曝露における神経行動機能及び生殖発生への影響 |
260μg/m3
(0.07ppm) |
設定日:
平成12年6月26日 |
キシレン |
内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
ヒトにおける長期間職業曝露による中枢神経系への影響 |
200μg/m3
(0.05ppm) |
設定日:
平成12年6月26日
改定日:
平成31年1月17日 |
エチルベンゼン |
内装材等の施工用接着剤、塗料等 |
マウス及びラット吸入曝露における肝臓及び腎臓への影響 |
3800μg/m3
(0.88ppm) |
設定日:
平成12年12月15日 |
スチレン |
ポリスチレン樹脂等を使用した断熱材等 |
ラット吸入曝露における脳や肝臓への影響 |
220μg/m3
(0.05ppm) |
設定日:
平成12年12月15日 |
パラジクロロベンゼン |
衣類の防虫剤、トイレの芳香剤等 |
ビーグル犬経口曝露における肝臓及び腎臓等への影響 |
240μg/m3
(0.04ppm) |
設定日:
平成12年6月26日 |
テトラデカン |
灯油、塗料等の溶剤 |
C8―C16混合物のラット経口曝露における肝臓への影響 |
330μg/m3
(0.04ppm) |
設定日:
平成13年7月5日 |
クロルピリホス |
しろあり駆除剤 |
母ラット経口曝露における新生児の神経発達への影響及び新生児脳への形態学的影響 |
1μg/m3
(0.07ppb)
但し小児の場合は0.1μg/m3
(0.007ppb) |
設定日:
平成12年12月15日 |
フェノブカルブ |
しろあり駆除剤 |
ラットの経口曝露におけるコリンエステラーゼ活性などへの影響 |
33μg/m3
(3.8ppb) |
設定日:
平成14年1月22日 |
ダイアジノン |
殺虫剤 |
ラット吸入曝露における血漿及び赤血球コリンエステラーゼ活性への影響 |
0.29μg/m3
(0.02ppb) |
設定日:
平成13年7月5日 |
フタル酸ジ―n―ブチル |
塗料、接着剤等の可塑剤 |
ラットの生殖・発生毒性についての影響 |
<p”>17μg/m3(1.5ppb) |
設定日:
平成12年12月15日
改定日:
平成31年1月17日 |
フタル酸ジ―2―エチルヘキシル |
壁紙、床材等の可塑剤 |
ラットの雄生殖器系への影響 |
100μg/m3
(6.3ppb)(注1) |
設定日:
平成13年7月5日
改定日:
平成31年1月17日 |
総揮発性有機化合物量(TVOC) |
国内の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定 |
暫定目標値
(注2)
400μg/m3 |
設定日:
平成12年12月15日 |
注1:フタル酸ジ―2―エチルヘキシルの蒸気圧については1.3×10-5Pa(25℃)~8.6×10-4Pa(20℃)など多数の文献値があり、これらの換算濃度はそれぞれ0.12~8.5ppb相当である。
注2:この数値は、国内家屋の室内VOC実態調査の結果から、合理的に達成可能な限り低い範囲で決定した値である。TVOC暫定目標値は室内空気質の個別の揮発性有機化合物(VOC)を総合的に考慮した目安として利用されることが期待されるものであるが、毒性学的知見から決定したものではなく、含まれる物質の全てに健康影響が懸念されるわけではない。また、個別のVOC指針値とは独立に扱われなければならない。
参考:○室内空気中化学物質の室内濃度指針値について(厚生労働省)
2. 高くなる住宅の気密性

快適・安心なすまい なるほど省エネ住宅」より抜粋(経済産業省 国土交通省 環境省 監修:秋元孝之)
住宅の気密性とは、「どれだけ隙間のない住宅か」ということです。
屋内と屋外の空気の移動による熱を少なくして、隙間風などが入らない状態の住宅は「気密性の高い住宅」であると言え、夏は涼しく、冬は暖かい、室温を維持しやすい環境になります。
冷暖房効率が上がるほか、遮音性が高くなり、結露・カビが発生しにくくなるのも特徴です。
一方で、密閉された住宅空間になることで、揮発した化学物質やハウスダストなどが、室内に留まりやすくなるため、計画的な換気が必要になります。
3. 換気が不足しがちなライフスタイル

近年、光化学スモッグや、花粉、黄砂などの有害物質を含む空気の汚染や、冷暖房設備の普及によって、部屋を締め切った状態を長時間継続することが多くなりました。
結果的に、室内に溜まった有害物質はそのまま留まり続けてしまうために、健康被害を引き起こす一つの原因となっています。
平成15年7月の改正建築基準法では、換気設備の設置が義務付けられるようになりました。
現在の住宅には、いわゆる「24時間換気システム」が導入され、十分に換気が行えるよう住宅設計がされています。
換気システムは常にスイッチを入れておくこと、フィルターを定期的に掃除しておくことを、心がけておくことが重要です。
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化学物質の少ない室内環境のためにできる5つのこと

- 使わない(安易な使用は避ける)
- 持ち込まない(新たな発生源を加えない)
- 追い出す(部屋に応じた適切な換気)
- 取り替える(揮発しない(しにくい)ものと交換する)
- なくす(発生源を取り除く:「環境配慮型」「環境対応型」製品の採用など)
1. 使わない(安易な使用は避ける)
化学物質を含む製品の使用を最小限に抑えることが重要です。特に、日常的に使用する洗剤や消臭剤、化粧品などは、成分を確認し、必要のないものは使用しないように心がけましょう。
2. 持ち込まない(新たな発生源を加えない)
新たな化学物質の発生源を室内に持ち込まないことも大切です。例えば、外から持ち込む食品や製品に含まれる化学物質に注意し、できるだけ自然由来のものを選ぶようにしましょう。
3. 追い出す(部屋に応じた適切な換気)
室内の空気を清浄に保つためには、定期的な換気が欠かせません。部屋の用途に応じて適切な換気を行い、外の新鮮な空気を取り入れることで、室内の化学物質濃度を下げることができます。
4. 取り替える(揮発しない(しにくい)ものと交換する)
揮発性の化学物質を含む製品は、できるだけ揮発しにくいものに取り替えることを検討しましょう。例えば、揮発性有機化合物(VOC)を含まない塗料や家具を選ぶことで、室内環境を改善することができます。
5. なくす(発生源を取り除く)
最後に、化学物質の発生源を取り除くことが重要です。「環境配慮型」や「環境対応型」製品を積極的に採用し、室内に存在する化学物質を減少させる努力をしましょう。
完全に化学物質を避けることは難しい環境ですが、以上の5つを心がけることで、室内環境をよりよく保つことができます。
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「化学物質」が原因とみられる健康被害

空気の汚染や、「化学物質」が原因と見られる健康被害を紹介します。
- シックハウス症候群
- 化学物質過敏症
- 上記の中でも「香害」に苦しむ人の増加
シックハウス症候群

シックハウス症候群は、室内の汚染された空気を吸うことで引き起こされる体調不良の総称です。
この症候群は、特定の環境から離れることで症状が軽減、または消失することが特徴であり、さまざまな要因が関与しています。
シックハウス症候群は、主に以下の要因によって引き起こされると考えられています。
これらの要因が室内の空気環境を悪化させ、健康に有害な影響を及ぼす可能性があります。特に、化学物質の濃度が高い空間に長時間いることが大きなリスク要因とされています。
症状には個人差があり、同じ環境にいる人でも、強い症状を訴える人がいる一方、全く症状が出ない方がいます。
主だった症状は以下の通りです。
- 目に刺激があり、チカチカする
- 鼻水、涙、咳が出る
- 頭痛、めまい、吐き気がする
- 鼻や喉が乾燥したり、刺激や痛みがある
- 疲れやすく感じる、眠気が出る
- 皮膚が乾燥する、赤くなる、痒くなる
揮発性の高い化学物質を使われている建材などを避ける、十分な換気をする、などの対策のほか、家庭用空気清浄機なども効果があるとされています。(ただし、家庭用空気清浄機はガス状物質に対しては効果が期待できないとされています。)
シックハウス症候群は、生活環境に大きく影響されるため、日常生活の中での意識的な対策が重要です。健康を守るために、適切な対策を講じることが求められます。
化学物質過敏症

化学物質過敏症とは、生活環境の中の、極めて微量な化学物質に接することにより、アレルギー疾患に似た症状が出る症候群のことです。
主だった症状は以下の通りです。
- 自律神経障害:発汗異常、手足の冷え、頭痛、易疲労性
- 内耳障害:めまい、ふらつき、耳鳴り
- 気道障害:咽頭痛、口渇
- 循環器障害:動悸、不整脈、循環障害
- 免疫障害:皮膚炎、喘息、自己免疫異常
- 運動器障害:筋力低下、筋肉痛、関節痛、振せん
- 消化器障害:下痢、便秘、悪心
- 眼科的障害:粘膜の刺激症状、調節障害、視力障害
- 精神障害:不眠、不安、うつ状態、不定哀訴
過去にある程度の量の化学物質に曝露された場合、アレルギー疾患のような状態になり、一度発症すると同じ物質が少量でも曝露すると過敏状態になります。
現在、化学物質過敏症は未解明な部分が多い疾患ですが、アレルギー反応と、急性・慢性中毒が複雑に絡まった疾患であると考えられています。
全国に100万人の患者がいるとされており、「ごく微量で反応する」「一度発症すると完治する方法がない」「ある日突然誰でもなる可能性がある」など、花粉症に似た性質を持っています。
原因になると考えられているものは以下の通りです。
- 香料等を含む洗剤、柔軟剤、芳香剤、消臭剤などの日用品や化粧品
- 殺虫剤や虫よけスプレー、農薬
- 接着剤や塗料、住宅建材
- 排気ガス暖房等の燃焼ガスなど
現在、化学物質過敏症に対する確立された治療法は存在せず、主な対策は、反応する化学物質をできるだけ避けることになります。このため、患者は日常生活において多くの制約を受けることが多く、社会的な理解と支援が求められています。
化学物質過敏症は、生活環境における化学物質の影響を考える上で重要な疾患であり、さらなる研究と理解が必要です。
「香害」に苦しむ人の増加

上記の「化学物質過敏症」の中でも、特に「香料」に反応する「香害」に苦しむ人が増加しています。
「香害」とは、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤、合成洗剤などの主に強い香りをとまなう製品による健康被害のことです。
体臭や自然物による臭いは含まれません。
香りの強い製品から離れると体調が改善される、あるいは、香りの強い製品を全く使わない場所では体調不良を感じないのが特徴です。
香害の増加の原因は、メーカーが家庭用品に付加価値をつけるために安価に製造できるようになった合成香料を多用するようになったためと言われています。
特に柔軟剤は、香りを長持ちさせ「マイクロカプセル」などの技術の普及で、香害の被害が拡大したと考えられています。
専門医や研究者が少ないため、「香料」と「体調不良」の具体的な関連性はまだ発表されておらず、早急な実態の解明が望まれています。
香害をなくす連絡会(日本消費者連盟)によるアンケート調査を実施した結果によると、アンケート回答総数は9332件。分析可能な9030件のうち、79%(7136件)が香害で体調が悪くなったことがあると回答しました。

そのうち、香りによって「仕事を休んだり、職を失ったことがある」「学校に行けなくなったことがある」など、休職や退職、欠席や休学を経験している人は、18.6%(分析可能の6858件中、1277件)に上ります。

体調不良を感じる原因の1位は柔軟剤(86.0%、6134件)、2位は香りつき合成洗剤(73.7%、5259件)、その他項目は多岐にわたります。

参考:【シャボン玉石けん】人工的な香料による体調不良経験率は過去5 年で連続増加傾向 日用品などの香料で72%が不快な思い、43%が体調不良を経験(PRTIMES)
「香害」で苦しむ人たちは、治療法が確立されていないため、「原因になる化学物質を避ける」しか対策が取れていないのが現状です。
人口香料の影響から自分で防御しなければならず、公共交通機関を利用する際は、マスクや、防毒マスクなどを、着用して過ごしています。
あなたにとって便利な「日用品」や「気持ちのいい香り」などが、近くにいる人が困る原因になっていることがあります。
人の集まる場所では、洗剤や柔軟剤、香水や制汗剤などの香りが過度にならないように、使用を控えるなどの配慮をしましょう。皆様のご協力をお願いいたします。
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新築・リフォームでできる「化学物質対策」
健康的な住環境を実現するために、新築・リフォーム段階でできることには何があるでしょうか?
考慮すべき「化学物質対策」について具体的な方法を紹介します。
間取りを考える

既に何度か説明している通り、換気はとても重要です。事業者に任せっきりではなく、換気や風通しに配慮した間取りにすることが大切です。
窓や家具の位置にも注意が必要です。家具で窓を塞いでしまったり、風の通り道に家具を置いたりしなくても暮らせる間取りを目指して、しっかり希望を伝えましょう。
場合によっては換気扇を利用して、風の通り道を作ることを考えます。
また、掃除のしやすさも重要です。段差の少ない間取りにする、家具の置き所を考えるなど、アレルゲン物質を除去しやすい環境を作りましょう。
使用する建材を考える

使用する建材や接着剤、塗料などは、化学物質の放散量が少ないものを選びます。
具体的には以下の2つが選択肢となります。
- 安全性の高い自然由来の素材を使う
- ホルムアルデヒドの放散量の少ない素材を使う(例:F☆☆☆☆)
建材だけでなく、作り付けの家具や、戸棚の扉、押し入れのふすま、カーテンや絨毯なども、化学物質が放散されるものがあるため、慎重に選び、運び込んだ後は念の為しっかり換気をします。
安全性の高い自然由来の素材を使う

建材は食品とは違い、成分を表示する法律がありません。「安全データシート」と呼ばれる、成分表を見ることができる資料がありますが、これは「労働安全衛生法で指示された化学物質が1%以上含有している場合に表示義務がある」というルールに則った資料です。
そのため、化学物質を避けたいと考えた時に、建材を選ぶのはとても難しいのが現状です。
安全に徹底的にこだわりたいと考える場合は、無垢材、天然石、漆喰やコルクなどの化学物質を使用しない自然素材はいかがでしょうか?
具体的に住宅業界で、「自然素材」「天然素材」の使われている箇所は主に以下の通りです。
- 内装材(壁・天井)
- フローリング材(床・壁・天井など)
- 石材(内外装などの化粧等)
- 断熱材(外断熱)
- ホウ酸(防蟻処理)
化学物質や、においを低減できる塗料「万生」

住まいに富裕する化学物質の低減、体を酸化(老化・さび)から守るなど、さまざまな効果を謳う、万生。
内装の仕上げに使用することで、壁や天井から揮発する化学物質を低減したり、床上に滞留する化学物質を低減することが可能です。
以下、施工可能内容一覧
- 壁紙・ビニールクロス表面加工
- 床(フロアコーティング)施工
- 塗料(天井・壁)施工
- 染色剤(天井・壁)施工
- 珪藻土・漆喰(自然素材に植物素材(万生)を配合する
この製品は、新築時やリフォーム・リノベーション後に発生する「建材臭」ついて植物素材を主原料とした、植物触媒施工による施工後の匂いの有無について実証実験を行い、悪臭防止法に則った検証の結果「無臭」判定の検査結果も出ています。
万生|BANSEI INSIDE合同会社
【住宅業界初】住宅の「建材臭」問題を解決!臭気検査で無臭判定取得!植物触媒®︎×建材臭対策に挑む住まいの専門家15社と共同実験を発表 PRTIMES
無垢材を使う(床・壁・天井など フローリング材)

「無垢材」とは、天然木を切り出して加工した一枚板のことです。
加工に継ぎ目がなく、接着剤が使われていないのが特徴です。調湿効果や断熱効果にも優れていて、一年を通して快適な室内環境で暮らすことができます。
一般的な合板のフローリングは、合板の上に薄い木を接着剤で貼り付けているため化学物質が発生します。
合板を無垢材に変更することで、健康被害のリスクを低減することができます。
無垢材は、天然木と混同して使われることが多いのですが、実は必ずしも「天然木=無垢材」ではありません。
天然木は文字通り「天然の木」を指すので、建材の一部分にでも天然木が使われていれば、合板、突き板、ひき板なども全て「天然木」となります。化学物質を避けるために無垢材を選びたい場合は注意が必要です。
また、無垢材と記されていても、防虫対策で薬剤を使ってあると、せっかくの自然素材であっても体に害のある化学物質が揮発してしまいます。フローリングの選定は慎重に行いましょう。
漆喰壁(壁・天井など 内装材)
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「漆喰」は、原料が「石灰岩」でできたものです。
埃やゴミなどがつきにくい、温度や湿度を一定を保つ効果がある、耐久性が高い、ウイルスや菌の繁殖を抑える抗菌性が高い、消臭力がある、など様々な特徴があります。
内壁だけでなく、外壁にも使用可能です。
自ら固まる性質があるため、接着剤などを加えずに壁にくっ付きます。和風、洋風、どちらの雰囲気にも合わせられることが魅力です。
シックハウス症候群の原因物質のひとつ(ホルムアルデヒド)を分解することも知られています。
部屋の臭いが気になる方や、アレルギー体質の方、小さなお子様がいる方、耐久性を重視したい方におすすめです。
珪藻土(壁・天井など 内装材)
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「珪藻土」は、プランクトンである珪藻が死滅して、海中に堆積してできた粘土状の泥土です。古くから七輪や耐火煉瓦などで使われてきました。
特に調湿効果に優れており、質感はザラザラしています。和風の雰囲気に合う素材です。
漆喰と異なる点は、珪藻土は自らの力で固まることができない点です。粒子と粒子をくっつけるようなつなぎを混ぜる必要があります。
「漆喰」と「珪藻土」はどちらにも調湿効果がありますが、「珪藻土」の方が調湿効果が高いと言われており、湿度の高い地域に住む場合は、珪藻土の方がおすすめとなります。
ホルムアルデヒドの放散量の少ない素材を使う
平成15年7月の建築基準法改正で、シックハウス症候群対策で、内装仕上げに使う建材のホルムアルデヒドの放散量の制限が制定されました。
規制対象となる建材は、木質建材(合板、木質フローリング、パーティクルボード、MDFなど)、壁紙、ホルムアルデヒドを含む断熱材、接着剤、塗料、仕上塗剤などで、これらには原則としてJISまたは、JASまたは、国土交通大臣認定による等級付けが必要となりました。
それぞれの建築材料の区分やJIS、JASなどの表示記号は以下の表の通りです。
※ホルムアルデヒドの放散量に対する建材の区分
建築材料の区分 |
ホルムアルデヒド の発散 |
JIS、JASなどの表示記号 |
内装仕上げの制限 |
建築基準法の 規制対象外 |
散速度 5μg/㎡h以下 |
F☆☆☆☆ |
制限なしに使える |
第3種ホルムアルデヒド
発散建築材料 |
5 μg/㎡h ~20μg/㎡h |
F☆☆☆ |
使用面積が制限される |
第2種ホルムアルデヒド
発散建築材料 |
20μg/㎡h ~120μg/㎡h |
F☆☆ |
使用面積が制限される |
第1種ホルムアルデヒド
発散建築材料 |
散速度 120μg/㎡h超 |
旧E2、Fc2
又は表示なし |
使用禁止 |
※1 μg(マイクログラム):100万分の1gの重さ。放散速度1μg/㎡hは建材1㎡につき1時間当たり1μgの化学物質が発散されることをいいます。
※2 建築物の部分に使用して5年経過したものについては、制限なし。
※3 JASでは、F☆☆☆☆のほかに「非ホルムアルデヒド系接着剤使用」などの表示記号もあります。
第2・3種に相当する建築材料は、それぞれ使用面積が制限されます。
この等級を参考に建材を選ぶことで、シックハウス症候群の発生リスクを低減することができます。
参考:シックハウス対策について知っておこう。 快適で健康的な住宅で 暮らすために 改正建築基準法に基づくシックハウス対策 (PDF 国土交通省住宅局)
換気設備を充実させる

平成15年7月の建築基準法改正で、シックハウス症候群の対策として、原則として機械換気設備の設置が義務付られました。
化学物質を発散する建材を使用しない場合でも、家具からの発散があるため、原則として全ての建築物に機会換気設備の設置が義務付けられ、たとえば住宅の場合、換気回数0.5回/h以上の機械換気設備(いわゆる24時間換気システムなど)の設置が必要となりました。
下図参考:居室の種類と換気回数の規定
居室の種類 |
換気回数 |
住宅等の居室 |
0.5回/h以上 |
上記以外の居室 |
0.3回/h以上 |
24時間換気システムは、運転音が気になったり、寒いと感じて止めてしまう人がいますが、基本的に止めてはいけません。

地方独立行政法人北海道総合研究機構による調査では、換気システムを停止したケースでは厚生労働省が提示する指針値を大幅に超えているのに対し、法律で定められた換気回数で換気したケースではどれも指針値を下回る結果となりました。
24時間換気システムの種類には、第1種換気・第2種換気・第3種換気・第4種換気(パッシブ換気)の4種類あり、戸建て住宅では第1種と、第3種換気が採用されるケースが多いです。
それぞれの換気方法にメリット・デメリットがあるので、ご家庭でよく話し合って採用を決めてください。
正しい知識と対応で、住まいにおける化学物質が原因の健康被害を減らそう
化学物質は安価で便利な一方で、健康被害を引き起こすリスクも伴います。
今後、建築業界はさらに有害物質に対する積極的な対応・対策が求められるようになるでしょう。
室内の空気環境における化学物質の影響を軽減するには、私たち一人ひとりが意識をもち、換気を十分にした上で、使用を最小限に抑える努力をすることが重要です。
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